着るアート

着るアート

先日のプレソラマガジンのポップアップには、沢山の方々にご来場いただきありがとうございました。巨大な紙媒体を一枚一枚めくりながらゆっくり鑑賞する体験は、なにか書物に触れる原体験を想起させるようで時間が経つのを忘れそうでした。

 

プレソラを仮に「読むアートメディア」と定義するなら、今回は「着るアートメディア」についての話。

 

 

 

 

以前からHibiで取り扱いをしているイギリス発のファッションエディトリアルArchivist AddendumとコンテンポラリーアーティストShelly Goldsmithの協業で制作されたこのTシャツ。Tシャツと絵の選び方は似ているとはよく聞くけれど、まさに「絵」みたいな服。

 

 

 

https://www.axisweb.org/p/shellygoldsmith/より

Shelly氏は、テキスタイルを主な制作のマテリアルとして用い、ファッション、ひいては衣服とその着用にまつわる心理と哲学的な普遍性について探究している。氏独自の昇華プリントの手法を用いて制作されたこのTシャツは、主に衣服やテキスタイルの持つ二面性について、紐解くと衣服の着用するものとしての着心地やそれに付随する身体的な「内」の側面と、衣服が他者からの視線を受ける対象として着用者の心理に働きかける「外」の側面をコラージュの手法を用いて表現した実践的な作品ともいうべきアイテム。

 

書籍とのコラボレーションで制作されたものではあるけれど、マーチャンタイズの枠にはめ込むにはあまりにも作品の純度が高く、商業的な恣意性を微塵も感じさせないクオリティ。

また、デザイナーズブランドの枠には収まりきらない作家性を含みながらも、洗練されたリアルクローズでもある。多面的な輪郭をなぞることによってのみ定義される曖昧でありながらオリジナリティをもった稀有なアイテムです。着る人に対して衣服を纏うことについて立ち返って思考することを促すような、そんな力があるような気がします。

 

プリントが乗らずに剥き出しになったボディは手作業の跡を感じる


 

バツっと切り離した裾は、着るたびに変化を楽しめそう

 

こういうある種のカテゴライズが機能しない服は、裏を返すと見る人の目線に寛容的で、手に取る人にとっての個人的なエピソードに寄り添う服でもあると思います。またカテゴライズされないからこそ、どんなスタイリングにも入り込んでその都度表情を変える柔軟性も持ち合わせています。

 

古着のTシャツを選ぶような自由さで、それでいて家に飾る絵を買うような新鮮な感覚を、この服を通じて感じ取ってもらえたらと思います。

 

数は少なくなってきていますが、是非店頭でご覧になってください。

 

アツヒロ

 

 

 

 

 

 

 

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