イチジクの木の分かれ目に座り、飢え死にしそうになっている自分の姿が見えた。
どのイチジクを決めたらいいのかわからないのだ。
あれもこれも欲しくて、一つを選んでしまったら、残り全てを失うと思っている。そうして決められずにいたら、イチジクにシワが寄って黒くなり、一つ、またひとつと足元の地面に落ちていった。
シルヴィア・プラス「ベル・ジャー」

fig.の由来は、シルヴィア・プラスの長文小説「ベル・ジャー」からのこの一節から引用したもの。figは、日本語訳でイチジクという意味だそう。この一節は、主人公のエスター・グリーンウッドが、イチジクを人生に例え、イチジクの木が枝分かれし沢山の実がなるように、人は多様な選択を持っていることを示唆しています。幸せな家庭、有名な詩人、素晴らしい編集者、小説に登場するソクラテス、コンスタンチン、アッティラなどの変わった名前と職業を持つ恋人との出会い、上にも下にも数えきれないほどのいちじくが実っている。
主人公エスターのように、デザイナーJokeもまた、沢山のイチジクから、その時の運命や興味に任せ、様々なイチジクを手にしている。そしてfig.を手に取った人が、シンプルなtシャツ、ロンtから、新たな可能性(イチジク)を手に取って欲しいと、願っている。


デザイナーJokeは、自身の製作を行う傍らfig.を起点に様々な活動をマルチに繰り広げています。彼女がデザインしたもの以外にも、fig. marketと題し、彼女が培ってきた審美眼をもとに様々なアイテムを販売しています。日本のたわしや線香、hibiでも取扱のあるマイケルマリオットのブックスタンド、リサイクル素材を使用したガーデンクロッグなど、幅広いジャンルをfig.という傘下で統一感を持ちながら展開しています。
またADDENDUMでは、彼女と共通する意志を持った友人たちにプレイリストを依頼したり、彼女のお気に入りの書籍やレシピを紹介しています。まだまだ関心事が山ほどあるという彼女は、自身でJj funhouseというレコードレーベルを始めるなど、彼女の好奇心と行動力には圧倒されます。
hibiでもメンズ・レディースの洋服、プロダクト、本といった異なるジャンルのものを、自分達の目を頼りに、キュレーション感覚で、様々なものを扱ってきました。それぞれ全く異なるものが同じ場に展開される中、どのように化学反応するのか、実験的に楽しんでいます。
fig.もまたhibiのようにある種のキュレーター的な要素を持ち合わせているように感じます。自分の好みが日々移ろう中で、それでも自分の輪郭を形成しながら、自分たちの輪を広げていくように楽しんでいる様子を伺うと、彼女の生き方にとても元気付けられる気がします。彼女の今後のfig.の活動、個人の活動が楽しみで仕方がない。
