視点というのは面白くて、誰しもが人と接していると考えることの1つだと思う。例えば僕の場合、洋服をみたり、プロダクトをみたり、本を読んだり、とりわけデザイナーがその場に居合わせた場合、そのデザイナーがどの部分を強調させているのかどの視点を大事にものづくりを行なっているのかが、職業病なのかとても気になってしまう。

会話上での視点の受け答えは、会話の流れやその人の気持ちでいかようにも異なった答えを発してしまう危険性も孕んでいるが、写真というのはその人の視点がより可視化されたものとして浮かび上がるように感じている。

井手さんの写真集「distance」は、カメラが持つ機械的な側面と井てさんが思う「こういう写真を撮りたい」といった主観が、絡み合い独特な緊張感を与えているように感じる。携帯を使い瞬間的に写真をスナップしていくのとは異なり、電子機構のない半世紀前のカメラを使用して、その場で立ち止まり、レンズの絞りとシャッター速度をダイヤルを回して設定した後、シャッターを切る。それはどのようなものを撮り、どう繋がっていたいのかという、自分と世界あるいは自分と目の前の風景との距離、そして自分の視点を超えた機械が取る風景との距離を、確かめていくようにカメラを用いて新しい風景へと世界を展開していくように感じる。

井手さんとズームで話した際にカバーの色を青にした理由も印象的だった。今回のデザインを手掛けているデザイナーから青い服を着ているからという理由でこの色に決まったらしい。普段からシンプルな洋服を着ている感覚で取り入れていた青色が、周りからみると印象的だった。井手さん自身はただ青い服を着ていただけという意図的なものでも何物でもなかった。それもある種の人との視点の距離なんだろう。

井手さんが撮り下ろした写真の数々は抽象的でどこか懐かしささえ感じられる写真だが、その懐かしささえ人それぞれ違った視点があるのかと思うと、この僕が考える懐かしさとは一体どこからきたんだろうと書きながら思う。でもそういった写真の数々が見る人を惹きつける一つの側面なんだろう。

この僕が考えるdistanceの視点も結局は井手さんが考えるところの写真とは異なったものかもしれないが、「みんな違ってみんないい」というクリシェで締めたい。

diastance | Yusuke Ide

木原