内側に宿す面と外側に放つ面。ファイト・クラブのブラッドピット、パーフェクトブルーの未麻、メメントの二重構造、リバーシブルの洋服。
今回はリバーシブルのジャケット。二面性をもったリバ仕様。というと変にこじつけてるように見えますが、所謂ファッションブランドのジャケットではなく、アーティストが作った作品。
女性アーティスト Charlotte Yorkがロンドンの出版社Dent De Leoneから The Knifeを出版しています。彼女は本の中で自分の財布に蓄積されていったコレクション(コインやお札、きっぷやトランプなど)を紹介していく。しかし、それは本という形式に置き換えてもなお溢れ出し、その過剰さはついにジャケットの"裏側"で紹介されていく。
そうして生まれたのが「You are my Knife」
白いヴェスパに乗って、彼女は現れた。
黄金のヘルメット。
その頂に、完璧な朝焼けをまとって。
静かにそれを外すと、
光がほどけるように広がった。
彼女の手は、レザージャケットの胸ポケットへと滑り込む。
指先に現れるのは、七角形のコイン。
そっとこちらに見せる。
見慣れた横顔――エリザベス二世。
彼女は、厳かにその女王に口づけをする。
二人のあいだに、太陽が沈み込んでいく。
そして、軽く弾く。
空中で回転するコイン。
時間がゆっくりとほどけていくように、
その動きだけが、はっきりと見える。
やがて落ちたそれを手に取り、見せると――
そこにいた女王は、
きちんと身なりを整えた、一匹のカエルに変わっていた。
ゼロ・ユーロ紙幣
無料のものなんて、ひとつもない。
このゼロ・ユーロ紙幣も例外じゃない。
モナコの海洋博物館の外にある自販機で、
私はそれを2ユーロで買った。
ただひとつのために――
この“矛盾”を体験するために。
金属のコインを2枚差し込み、
手に入れるのは、
「価値はゼロ」と記された紙切れ。
もちろん、これは通貨だ。
人が買い続ける限り、
それは作られ続けるのだから。
暖かな一日の終わり、
実りある打ち合わせのあと、
モナコという特異な場所でのこの出来事を、
私はどこか気に入っている。
この紙幣は、偽物ではない。
ヨーロッパ中央銀行の認可を受け、
本物の紙幣と同じ紙、同じ印刷技術、
同じセキュリティで作られている。
ある意味、これは銀行強盗だ。
しかも、銀行自身が共犯者の。
銀行が土産用の紙幣を刷って、
さらに利益を得ようとする――
それは、どこか示唆的だ。
お金でお金を買い、
その瞬間に100%の価値を失うという体験をしたあと、
私はこれをどうすればいいのか考えた。
ナイフに加える以外に。
最初に浮かんだのは、
この奇妙な物について娘と話すことだった。
でも、彼女の問いには、
きっと私は答えられない。
その夜、別の街の学生パーティーに向かった。
バーで気づく。
現金を持っていない。
カードは使えないという。
そこで私は、
何かが起きることを期待して、
ゼロ・ユーロ紙幣を差し出した。
バーテンダーは、
美術学校に通い始めたばかりの若い学生だった。
彼女はそれを見て、笑った。
そして、とても嬉しそうに、
その紙幣を自分のポケットにしまいながら言った。
「これで一晩中飲めるよ」
実際、その通りになった。
そして翌朝、
ひどい二日酔いで目を覚ました。
(友人が和訳してくれました、感謝、、)
Charlotte Yorkと、その父による物語から生まれたコラボレーション。ジャケットは表で着ると男の顔が刺繍された背面が浮かび上がり、裏側で着ると彼女が集めたコレクションが開かれていく。
彼らが体験した軌跡を辿りながら、自由であたたかい想像力で、彼ら独自のラインを紡いでいる。そして本へ、洋服へと転換されることで、所有者が新たな解釈をもって、それらを展開し、共有していく。着用者自身もKnifeとなって。

緑はPUコーティングコットン、黒はシルク、エディション43、Charlotte Yoke、åbäke、ロンドンのファッションデザイナーPeter Jensenによるコラボレーション

