COSMIC WONDER The North Village Fair

どんよりとした曇空の中、日に日に増していく気温。そんな湿っぽい空気の中、この時期特有の雨の匂いが、梅雨の始まりが近づいてくる気配を感じさせる。

日本特有の梅雨空は、ロンドンやドイツの排他的なグレーとは違い、自然との摂理が感じ取れるような気が向こう側にいってしまいそうなグレー。COSMIC WONDERを連想すると、そんな日本的なグレーが頭の中でいっぱいになる。

明日からCOSMIC WONDER The North Village Fairが始まります。

Photograph by Hanayo

思えば、僕は学生の頃、外の国ばかりを見てきた。彼ら異国の人が装うスタイルがとにかく格好いいと思っていた。内のことをわかりもせず、ただファッション的に向こう側に身を寄せたくて、憧れの気持ちで外の世界にしかファッションがないと半ば決めつけながら。でもだんだんとその時とは違う考えが自分の中で沸々と湧き上がってきた。そんな矢先、偶然にもCOSMIC WONDERとの出会いがあった。

昨年の11月、京都のElberethさんにて、Elein Fleiss L'HIver / Diana,Flore と COSMIC WONDER THAT OLD MAGICの展示で出会った。 

1997年にCOSMIC WONDERを設立。それ以降COSMIC WONDER JEANSを発表し、COSMIC WONDER LIGHT SOURCEヘ。アートとファッションを縦横無尽に行き来するデザイナー前田征紀氏はCOSMIC WONDERを主宰しながら、現代美術家として、現在はAAWAAと個人名義を改め、活動している。そして、COSMIC WONDERは再度、COSMIC WONDERとして全てのラインを統合し、現在京都・美山を拠点に活動している。

昨年、京都の美山に遊びに行った。

COSMIC WONDERについて、掘り下げて説明しようと思うと20年以上続くブランドばっかりに、それらを詳しく説明するのは少し野暮かと思うので、ここではあえて言わないでおこうと思います。過去を知りたい方は、検索したら沢山の記事がでてきます。

今回のコレクション「The North Village Fair」は、インド在来種の綿花カラコットンを本藍染と手織りの綾織により仕上げたワークウェア、琉球藍による藍染のコレクション、オーガニックコットンブロードを使用し後染めで仕上げたコレクション、どれもがテキスタイルから、まるで魔法がかけられてできた必然的に生まれた形。一度着てしまうと肌に馴染む生地感、抱擁感のあるシルエットは脳裏にこびりつく、美味しいご飯を食べた後にくる味の記憶と同じような、そういう洋服たち。

Photograph by AAWAA
Photograph by AAWAA

デザイナーは時代と共に生きなければならない。20年以上の月日を経ても色褪せずに魅力的な洋服を作ること。ブランドを設立して20年以上が経過したからこそ、COSMIC WONDERは根底にある「精神世界の広がり」をコンセプチュアルなものとして表現する以上に、必要不可欠な衣服へと展開しているようにみえる。

ここ数年の消費としてのファッションから脱却するため、彼がデザインした洋服は、崩壊に向かう世界から立ち上がった必然性のあるブランドとして、個人から他者へと視点を変えて、素材と向きあうことで生まれる日常の美を探究し続けている。

Photograph by Hanayo

今回のイベントでは、洋服のコレクションに加え、hibi bookstoreCOSMIC WONDER FREE PRESSの書籍も並びます。また初日の7日にはデザイナーAAWAA氏と制作に携わる古野氏にも在店していただきます。灰色の空の下、光をもった洋服、ホワイトマジックを体験できることを、私たちも楽しみにしています。

木原

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