Repurpose

先週、北加賀屋にある千鳥文化ホールに足を運びました。目的はドイツの「RWTHアーヘン工科大学」による建築の材料や廃材の循環に関するリサーチをメインとした展示「素材の流れ Material Flows」。hibiでお取り扱いさせていただいているブランドAYA YAMANAKAのデザイナー山中彩さんが展示スペース入り口のインスタレーションを制作しており、それを見るのが一つの目的でした。

日本の建設現場で見られる足場用メッシュシートを、不要になったレースカーテンを用いてつくられた”Scaffolding curtain (足場カーテン)”


普段店頭ではTシャツの形でみていた素材がガラス張りのファサードにかかる様子は、同じレースカーテンなのにも関わらず、全く別物に映りました。洋服の枠を超えた彩さんの作品は、ブランドの中でもクッションやテーブルといったプロダクトの形で見ることがありましたが、規模感も相まって迫力がありました。その他展示内容は建築資材やその手段を、多角的に研究したレポートされていて、知識が乏しいながらもアップサイクルな手法の多様性に感銘を受けました。今月末まで開催されているようなので、ご興味ある方はぜひ足を運んでみてください。

ちょうどタイミングよくAYAさんの洋服がお店に届いたので、今回はAYA YAMANAKAについて書こうと思います。

展示をきっかけに、ふとアップサイクルな制作に関して考えました。洋服においても近年様々なデザイナーの功績により、アップサイクルという言葉自体目新しいものから馴染みあるものへと変化してきた気がします。数あるそういったアプローチの中で、なぜ彩さんのプロダクトは僕たちの目を引くのか。

レースカーテンがTシャツになる、キッチンナプキンがシャツになる、タイツがドレスになる、ブランケットがジャケットになる、タオルがベスト/バッグになる。

本来そう使われることがなかった素材が異なる用途の素材として転用され、意図しているのかその結果生まれた洋服たちは機能性や耐久性の面で軽さ(もしくは脆さ)や重さ(もしくは過剰さ)を持って立ち現れます。

洋服になることで、素材の間にあるギャップや違和感みたいなものが露わになり、着る人はその隔たりを自分のスタイルに落とし込む過程で頭を悩ませると思います。ファッションは感覚的な部分も多いと思いますが、思考し続けることも僕は大事だと思います。そんなきっかけをAYA YAMANAKAの服は与えてくれるはずです。ぜひ皆さんも、AYA YAMANAKAの服を手に取って、一緒に考えてみてください。

そして、不要になった素材そのものが、洋服になることで全く新しいものとして見える瞬間にAYA YAMANAKAの洋服に強く惹かれます。

よくお客さんとの会話で、僕がもともとの素材のことを話すと驚かれることがあります。そのあとお客さんの顔が綻んで、普段から身の回りにあったものだったことに気づかれるその瞬間が、僕は好きです。

キッチンクロスは真新しいブロックチェック柄に、キワどい柄のタオルはアヴァンギャルドなグラフィックベストに、端切れ生地の耳はラインパンツのサイドラインのように、ファッションというフィルターを通すことで一度光を失った素材に再びスポットライトを当てる魔法が彩さんの服にはかかっているように感じています。

彩さんがAYA YAMANAKAというファッションブランドを通して、これまで焦点が当てられずにいたテキスタイルに新たな魅力を与えるように、明日から始まるポップアップ会場SUIMON HOTEL HIGASHI YODOBORI RIVERもまた普段気づかない小さな光を、様々なジャンルの人々が集うオープンな場所として生まれた実験施設です。

東淀堀川に位置する旧水門施設を改装しホテルの一室と見立てるこの会場でのポップアップを21、22日の二日間行います。今回のポップアップでは、届きたてのAYA YAMANAKAの洋服や、hibiがセレクトしたメンズ・レディースの古着。そしてプロダクトは、こちらもちょうど届いたマイケルマリオット、吉行良平さんのkop、新宮夏樹さんのedaもお持ちいたします。また新入荷のアートブックなど、hibiのラインナップを惜しみなくお持ちします。

会場に足を運ぶだけでも面白い発想が浮かんできそうな素敵な空間です。是非皆さまのご来店お待ちしております。

永田・木原

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