SAMY PRESS @ hibi, POSTAL MATTER

7/1からアーティストブックを製作するレーベルSAMY PRESSの展示「SAMY PRESS @ hibi」が始まります。本展では、これまでSAMY PRESSが作品の支持体として出版してきたアーティストブックやマルチプルと、本展に合わせた作品群POSTAL MATTERを展示いたします。

 

POSTAL MATTERとは、本展のDMとして製作したポストカードを、4名の作家に提供し、その等質な情報の中から、各々の視点によりどのような解釈で変容していくのかを探るプロジェクトです。これまで本を作品の支持体として製作してきたSAMY PRESSの視点で、DMという紙を使用した印刷物をもとに、新たな可能性を探ります。

 

この企画が決まってから、改めてポストカード、DMについて考えています。

 ポストカードは、1869年オーストリア(ハンガリー帝国)から始まったもので、官製ポストカードとして、安価に使用できることから世界各国に広まりました。それから1870年代後半には、現在のように旅先やイベントで出会う記念品として広まっていったそう。また日本でも同時期から政府が郵便ハガキを発行しており、年賀状を送る人が増えたそうです。

最初期のポストカードはシンプルに表に宛名、裏にメッセージを書いていたそう。
1880年代以降の写真付きポストカード?

僕にとって絵葉書やポストカードの記憶は、父親が出張から帰ってきた際にもらえるお土産が始まりだったと思う。自分はそこに出かけていないのに、父親の土産話とポストカードによって、あたかも自分が旅に出たような記憶が上書きされる。

それを大事に勉強机の引き出しに置いておくほどに、そのものの存在が自分の中で大きくなり、ふと眺めた時にその町の記憶が頭の中で広がる。物語、記憶、ファンタジー、果てしない創造性がポストカードにはある気がする。

 幼少期の頃のそのイメージと、今のイメージとは微妙に違う。哀愁のある思い出深いものや年賀状というイメージよりも、ブランドの個性やムード、スタイルを表現するための媒体として、またこれまでの記憶、コレクションをアーカイブする手段。誰かにものを送ってもらった時に付属されたメッセージ付きのポストカードなど。幼少期の頃のそのものの思い出や記憶、美しさに加えて、機能や利用する上での性質も見えてくる。

初期に発行された当初と同じように情報伝達のツールとして使用され、また本展のようにDMとして使用される場合、ポストカードは誰かが移動するためのきっかけになりうる側面もある。その制作に合わせて誰かにグラフィックを依頼するといったコラボレーション、他者への介入も可能にするツール。またそれを一枚のキャンバスのように見立て、作品として製作する場合もある。

 

SAMY PRESS #2 post card (I'm not the one who sent this) - Nagamine Keijiro, Ryuji Takahara

SAMY PRESSは、これを情報伝達として機能するDMとしての要素と、それを支持体とした自己表現のツール(作品)として、また新たな成果物を制作するための手がかりとして、ポストカードの様々な側面を利用することで、ポストカードという馴染みがあり偶然にも手に取れる誰もが触れたことのあるリアルなものを探究する。

SAMY PRESS #1 microwaves - Ryuji Takahara
SAMY PRESS #5 Color and Qualities - Yohei Watanabe

 本展では、その成果物を展示・販売いたします。またhibiはあくまでギャラリーとしての空間ではなく、洋服・プロダクト・本が交わりそれらを販売するショップです。そのため、いわゆるホワイトキューブの展示のように、ぽつんと置いただけのシンプルな展示ではありません。作品の横には商品が並び、また来店するお客様が展示を見にくるだけではなく、そこにある洋服や本いった商品を買いに来る人、近所の老夫婦など様々。

この様々なものや人が介入することで、その作品自体も周りにあるものに影響され、溶け込みながら展示されます。作品自体の解釈とは別のあらゆる角度から影響を受けながらそのものの解釈が可能になると思います。その辺りも楽しみながら、今回の展示を見ていただければ幸いです。

SAMY PRESS#4 No Rest for the Obsessed(Dog)-Keijiro Nagamine

SAMY PRESS#3 Ceremony, hiking, poop-Takeshi Yasura

 また初日7/1hibiは2周年を迎えます。いつもご愛玩いただきまして、本当にありがとうございます。ささやかではございますが、2周年を記念して7/1はフリードリンクを提供しようと思っております。明日は皆さんとゆっくりと楽しく過ごせたらと思っております。ご来店お持ちしております。

SAMY PRESS

SAMY PRESSはアーティスト高原颯時、長嶺慶治郎とグラフィックデザイナー村

尾雄太によって運営されているアーティストブックのレーベルです。

展覧会図録やカタログとは違った、それ自体が作品として機能する支持体として

の出版物のリサーチ、制作をアーティストと共同で行います。

 

POSTAL MATTER 参加アーティスト

杉本龍哉 / Tatsuya Sugimoto

1993年生まれ。2016年京都造形芸術大学(現・京都芸術大学)卒業。

2022年ハンブルク芸術大学卒業。

主な展覧会に

Please ask me if you have any quewstions(Holger Priess Gallery、ハンブルク、2024)

Ibasho 2, The place where I/we can be」(北海道教育大学、北海道、2023)、

Schnee von Gestern (Kunstverein Lüneburg、リューネブルク、2023)など。

 

高原 颯時 / Ryuji Takahara

1992 年生まれ。京都造形芸術大学(現・京都芸術大学)卒業。アーティストブックレーベル SAMY PRESS のメンバー。

主な展覧会に

How long does lightning live?(GALLERY SOAP,北九州2024)

Lighthousekeeping(tata bookshop/gallery,東京 2023)

microwaves」(CLEAR GALLERY,東京2023)、

Reheat」(STUDIO STAFF ONLY, 東京, 2020)、

PARTY」(CLASS, 東京, 2020)、

Nice shop su 5th anniversary exhibition」(pehu, 大阪, 2019)など。

 

長嶺 慶治郎 / Keijiro Nagamine

1993 年生まれ。京都造形芸術大学(現・京都芸術大学)卒業。パリ国立高等美術学校修士課程修了。

アーティストブックレーベル SAMY PRESS のメンバー。

主な展覧会に

ATAMI ART GRANT 2024」(熱海 2024)、

How long does lightning live?(GALLERY SOAP,北九州2024)

microwaves」(CLEAR GALLERY,東京2023)、

Milieu des Choses」(POUSH, パリ, 2022)、

「コンパスも回らない」(KAWAKYU ART Exhibition 2022, 川久ミュージアム,

和歌山, 2022)、

Illusions never come alone」(Palais des Etudes, パリ, 2020)など。

 

渡邉 庸平 / Yohei Watanabe

1990 年福島県⽣まれ、東京都在住。

主な展覧会に、

7-2-3-9-6-12」(個展)CADAN有楽町(2024,東京)「Spoon(個展) HAGIWARA PROJECTS (2023, 東京)Labender Hairimlabor (2021, 東京)、「The Mug Blues LAVENDER OPENER CHAIR (2020, 東京)、「Giant Chorus( 個展 ) HAGIWARA PROJECTS (2019, 東京)、「4 boxes and pyramids4649(2018, 東京)、「群⻘」児⽟画廊 (2017, 東京)、「猫の肌理、雲が裏返る光」( 個展 ) KomagomeSOKO(2017, 東京)、「SPVI IITurner Gallery (2015, 東京)、「THE EXPOSED#9 passing pictures g/p Gallery 東 雲(2015, 東京)、「at work」東京芸術⼤学 Yuga Gallery(2013, 東京)、など。

木原

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