ファッション、プロダクト、アート、本など僕には各分野で先生と勝手に思っている人たちがいます。
今回ご紹介する安宅さんもそのうちの1人。ジュエリーレーベル「ATAKA」を営みながら、自身のスペースでデザインに纏わる企画展も行い、毎度展示に伺う度に面白い発見があるんです。ATAKAでE&Yの展示を見に行った際に初めてお会いして以来、安宅さんが制作したジュエリーの展示を見に行ったり、ilmmの展示や、ジャスパーモリソンの展示など、面白い展示が頻繁に行われており、毎回楽しみに足を運んでいます。

ATAKA
安宅さんのジュエリーに対するアプローチは、単なる作品発表には留まりません。2024年に発表した展示「Presentation 2024」にて、Au750‰合金(18Kイエローゴールド)の配合比率の変化による特性や性能の移り変わりを66種類の色彩としてデータ化し展示。素材そのものの在り方を見直すようなプレゼンテーションが行われていました。
また2025年の展示「Exhibiton 2025」では、これまでの18年間のジュエリーデザインを見直したうえで、作家性や主観をなるべく介入させない、一工程で完成する作品を展示していました。
安宅さんは、自身の作品を表現の一環として提示するのではなく、デザインとして、また使用する素材に誠実に向き合うことで、既成概念に対する違和感を起点にリサーチを行うといったプレゼンテーション、そこから生まれる安宅さんが考えるデザイン、心地良い在り方を探求しているように感じます。また安宅さんはジュエリーデザイナーとして活動しながらも、自身のスペースで様々なプロダクトデザインの展示を行っており、僕は安宅さんのことをデザイナー兼、文化人的、あるいはキュレーター的存在として考えています。
そういったジュエリーとプロダクトデザインを横断する安宅さんは、個人名義である「Hiroki Ataka」よりBookmarkを制作しました。
このBookmarkは、2023年末から製作がスタートし、2年以上の歳月を経て、発表されたプロダクトです。2025年に行った「Exhibition 2025」以前から制作活動が始まっていたBookmarkですが、後の展示にも接続していくような手法を感じさせる、ステンレス材の上部5mmを曲げただけのシンプルなデザイン。
一般的なブックマーク(しおり)は、板状で使用していると位置がわからない、上部に突き出すように配置していると、曲がってしまったり、ステンレスや真鍮といった素材の場合、周囲の物を傷つけてしまう。その配慮から曲げるという一工程のみで、天からみても位置は一目瞭然になり、そのうえ折れ曲がったり、周りの傷つけることなく、使用することができます。

これは安宅さんがこれまでジュエリーデザインを行ってきた背景で、ジュエリーや身の回りのものを大事に扱いたいという配慮から生まれたデザインのようです。また文庫本のノドへBookmarkを配置した際に、文字と重ならない程度の幅10mmで設計されています。

ステンレスバネ材を使用。刻印はエッチングによる。
このBookmarkにも、安宅さんがこれまで長年向き合ってきたデザインへの姿勢や、素材との関係性が静かに表れているような気がしています。
実際に使用していると使いやすく機能的なうえ、凜とした佇まいが、空間に置かれているだけでも、空間の一部として目を引く存在感があるように感じています。


