これまでに自分で買ってきたものを思い返すと、その動機が一過性のものだったのか、それとも異なるものだったのか、必要性や普遍性、あるいは機能性のような意味を頭の中で手繰り寄せて買う場合と、それを超えた言葉にできない何かが降ってくる場合、衝動で買う場合など、動機は無限にあると思います。
正直この先ずっと使うかどうかもわからない状態で買うことがほとんどだと思います。それでも買う楽しさも含めて、僕はものを買うのが好きなんですよね。

大学生頃から今まで買ってきたもので、常に一軍にあるものといいますか、いつみても魅力的にみえるものって中々ないような気がしていて、今回は僕の中でそういうものの一つをご紹介できたら。

Little Finger Ring by Gijs Bakker

3年ほぼ毎日つけているGijs BakkerがデザインしたLittle Finger Ring。ご縁があってhibiでもお取扱いさせていただいております。

1967年、妻であるEmmy Van LeersumとGijs Bakkerがコレクション「Edelsmeden 3」を発表し、近未来的なジュエリーをデザインしました。洋服と一体化したジュエリー、首と顔を覆うほどの大きなジュエリーなど、前衛的な作品を発表していました。ちょうどPierre CardinのFuture Look、CourrègesのThe Moon Girlとリンクする時代に、彼らはオランダ・アムステルダムでジュエリーという媒体で革新的なデザインを行っていました。その「Edelsmeden 3」の際に発表されたLittle Finger Ring。確かに円盤のようなコスモを感じるデザインは、無機質でありながら未来を想起させる神秘的な印象さえある。

Collar coll by Gijs Bakker 1967 (De show van Gijs+Emmy The Gijs+Emmy Spectacleより)

彼が制作するジュエリーはその後いわゆる排他的で装飾性を帯びた権力、富の可視性をもつジュエリーから距離を取った、身の回りの素材、新素材を使用するなど社会性を帯びた、ある種の芸術性も備えたコンセプチュアルジュエリーといわれるジュエリーを製作していきます。その特性をさらに拡張しプロダクトデザイン、オランダのデザインチームDroogを立ち上げるなど、コンセプチュアルデザインのパイオニアとして、幅広く活動しています。

左下 : 1989年にDroogから発表したGijs BakkerのChair with holes (simply droogより)

Gijs Bakkerにより設立されたジュエリーレーベル"Chi ha paura...?"

彼の活動を読み取っていく中で、彼が製作したLittle Finger Ringは、一般的な普遍性とは掛け離れた未来的でアヴァンギャルドなデザインです。それでもこの作品には、彼の活動の行き着く先を垣間見るように、プロダクトデザインが標榜する、使用していく中でどこにも置き換えが効かない革新的なデザインとして、後世に語り継がれる素養を含んでいるように感じます。
いわゆるファッションブランド、ジュエリーブランドが制作するジュエリーでもない。コンセプチュアルジュエリー、プロダクトデザインなど様々なジャンルを横断しているからこそ、ファッション的な一過性のあるものでもなく、プロダクト的な普遍性のあるものでもない、使用する際に感じる高揚感と毎日使用しても飽きない美しさを兼ね備えたどこにも所属していない地点に位置する固有な存在として。

特にジュエリーは、祈りをするための呪物といった背景から、さらには関係性の記号、いわば身体の内部を表出するための器として機能しています。僕はこのジュエリーを毎日身につけることで、自分の中にあるファッションやデザインの在り方を見つめ直す鏡として、ひとつの指針のように身につけています。

木原