はてさて、沢山の入荷で店内ばかりが充実してしまい、それにあわせたジャーナルを更新できておりませんでした、とほほ、、
これまでhibiでは洋服、本、プロダクトというジャンルで、例えば洋服が好きな人が本を手に取ったり、本が好きな人がプロダクトを好きになってもらえたり、異なるジャンルが交差する場としてお店作りを続けてきました。
僕がこのような場作りをするきっかけになったのは、間違いなく雑誌です。
お店をやる以前、ファッションだけにしか興味がなかったころ、VOGUE RUNWAYを頼りに、ブランドのルックを未漁り、ブランドをインスタで調べるということをずっとやってるうちに、なんのきっかけだったか自然と雑誌も手に取るようになっていました。ちょうどその当時VETEMENTSが一世風靡していた時代、GRINDかBrutusだったかの特集号を買ったり、RE-EDITIONやSTUDIOVOICEも手に取るようになっていました。

特に古本で買ったSTUDIO VOICEやMr. Highfashionなんかは強烈で表紙のサムネで買ったもののその内容のものがメインでも、それ以外は全く異なる内容ばっかりで。ページをめくるたびに知らないことが沢山特集されていました。でもそれが自分が辿り着かなかったことに出会える場となり、色んなことを知れたきっかけにもなっています。
本で知る、そこに映る写真を見て、テキスト、キーワードを携帯で検索して、また本に戻る。それを行ったり来たりしながら、いろんな物事を知れるようになりました。たとえその内容を忘れていたとしても、アーティストやデザイナーの名前は覚えているもので、どこかのタイミングでまた出会う機会がある。そのように点が線となっていく流れを楽しいんです。
hibiではそれを誌面ではなくて、フィジカルの場として、お店が雑誌のように一つの新しい何かを知れる場になればと思い、続けています。服屋にディスプレイとして本が並ぶというのは、店の空間、思想を伝えるために重要なことですが、hibiではそれがちゃんと手に取れる、持ち帰れるということも大事だと思っていて、今シーズンからは、僕らがセレクトしたブランドがどのような背景があるのかをより知ってもらう手掛かりとして、シーズン毎の選書を行うことにしました。
これはただ背景を語るというのではなく(これまでも自分たちの所有している本やブランドの本を紹介しながら説明してきました)、僕らが勝手に解釈して、このブランドには「こういう視点があるのではないか」とか、「このアーティストと親和性があるのでは」という僕らの目線で、自由に、ある意味で出鱈目に選書しています。

COSMIC WONDERは、精神に宿る衣服というテーマのもと、東洋の道具や民具をファッションのコンテキストで語ることで、それらがどのように作用するのかを取り組んでいます。またBLESSは、彼らが定期的に展開するファウンドオブジェクト(これは彼らが旅をした際に出会った道具にBLESSのスタッズをつけることでBLESSとしてそれを拡張している)で、フィールドに存在しなかったものをそのまま提示しています。
これらはどこまでがファッションでそうではないのか、その境界線を曖昧にしています。
そのような観点から、アメリカのカルマン夫婦が手がけた作品集『(un) fashion』と、Other Editionsが発行するThe City Is Oursの最終号『Involuntary Sculptures』を選書しました。

(un) fashionでは夫婦が旅をした中で、出会った人々が身につける衣服や身体表現の中から、それらがファッションとして提示していないにも関わらず、ファッション的な美を感じさせる地域特有の多様性のある美しさを提示しています。またInvoluntary Sculpturesでは、マルセルデュシャンが提示したレディメイドのように、もの、環境、もの同士の関係性と選択により、街中に溢れているものが彫刻として立ち上がる可能性を提示しています。

(un) fashion : このページだけみてもBLESSが引用しそうなものが沢山ありそう。COSMIC WONDERのドレスに近いものも拝見できます。
Invluntary Scupltures : アッサンブラージュと定義した街中にある廃棄物などを撮影したページ。BLESSも今回アッサンブラージュを行うように、マフラー、デニム、シャツを繋ぎ合わせたWorn Togetherというアイテムを制作していました。
これらに共通するものは、あらかじめ美しいものとして意図的に提示されたものではなく、それらが自然と人の本能や即効性、場とものの組み合わせによって何にでも美を見出す可能性があるというのを提示しているように思うんです。
COSMIC WONDERは羽織とテーラードを組み合わせたり、韓国の衣装をファッションに置き換えることで。BLESSは、自分たちが休日に直感で撮った写真を全面にプリントすることで、写真以上にインパクトのある作品としてHolidayシリーズを制作しています。

Look Good, Feel Good, Play Good: Nike apparel : LIIの特徴の一つであるカラーリングなどもこの本から拝見できました。
今期から取り扱うLIIにはスポーツウェアの解釈やアートとの地続きを感じました。NIKEのスポンサーがついているのもうなづけるスポーツウェアの要素をふんだんに使ったものづくりをhibiでしかできない提案として、洋服を組み合わせるのではなくNIKEの本を紹介します。
またレビューではよく「ミニマル」というワードが使われていますが、アートの文脈でLIIを置き換えるとネオ・コンクリートアートが頭に浮かびました。ネオ・コンクリートアートは、ミニマリズムが芸術運動となる以前、コンクリートアート(1930年にオランダのテオ・ファン・ドゥーズブルフが提唱した芸術運動で、幾何学的な形や色、線を、自然や感情的な表現を切り離し、それ自体で成立するアート)が提唱され、その運動をさらに飛躍させ、身体や動き、鑑賞者の介入を通して成立する可能性を持った芸術運動です。
僕がパリでスペインのブランドAlguienのデザイナーたちに会った時のこと、たまたま僕はLIIのコートを着ていました。その際に彼らがLIIの洋服を面白がっているのを思い出しました。正直、その時はかっこいい装いとして、LIIを着ていたので、何故彼らがそんなに良いと思っているのか不思議でした。それからAlguienのことやLIIについて考えていると、Alguienの Lygia Clarkを引用した作品を思い出しました。Lygia Clarkはネオ・コンクリート・アートを代表する作家の1人でした。この運動は、作品を固定された物体として捉えるだけでなく、身体や感覚、鑑賞者との関わりを通して成立するものとして捉え直しました。
LIIの奇怪なドレープや曲線は人が着用し、着用者が洋服と一体になることで初めて生まれる造形だと思います。その点からネオ・コンクリート・アートを代表する作家のLygia Papeの作品集を提案しています。LIIを着てAlguienに出会えていなかったら思いつかなかった視点でした。

LYGIA PAPE / Lygia Pape : Amazonino Vermelho e Preto

LIIのコートは着用者がドローコードを調整することで独自のフォルムを作りだします。

こちらはAlguienが現代アーティストFranz Erhard Waltherを引用したシャツ。この元ネタの作品も着用者が実際に袖を通すことで完成します。ネオ・コンクリート・アートとも近いような。

Franz Erhard Walther, The Body Added, 1983
最後はテキスタイルからオリジナルで洋服を制作するSONO、またまたCOSMIC WONDER。SONOは彼らが所有していたヴィンテージの衣服や過去の遺産を、彼らの思想を通して、それらを引用することで消費的にならないものづくりを制作しています。そしてCOSMIC WONDERも彼らの精神性をたよりに、東洋のスタイルをベースにしながら、西洋のスタイルも織り交ぜ、生きた洋服を作り続けています。
彼らの未来に残るものづくりを行いながら、温故知新の視点を持つ点に、August Sanderの『People of the 20th Century』を選書しました。本書は、「農民」「職人・手工業者」「女性」「職業と社会的地位」「芸術家」「大都市」「最後の人間たち」の7グループに分類されています。実際にそこで生活していた、気取った印象もない真実を切り取った作品集です。この写真集を見ているとSONOやCOSMIC WONDERの制作したアイテムのリファレンスとも取れる沢山の洋服やスタイルが、当時の人々と一緒にご覧いただけます。

COSMIC WONDERのケンピとシェトランドウールを使用したベストとAugust Sander

With SONO SELKIE SCARF Black on Black

まだ紹介できていない作品集もございますが、洋服に興味はあるけど本はまだ手を出せずにいる人、その逆に本は興味はあるけど洋服は、という人にもご紹介できる内容になっていると思います(これからシーズン毎に選書していきたい、、)。
情報過多かもしれませんが、僕は昔の雑誌のようなカオスで色んな内容が詰まったコテコテが好きです。hibiもカオスでわかりづらい、それでも時間をかけてゆっくりと解きほぐしていく、そういうお店になれば良いと思います。

E RT Merino long sleeve tee with PIG 05049 / Christien Meindertsma


