最近、何かを「待つ」ということが少なくなったように感じています。知りたいことはすぐに検索できて、音楽も映画もすぐに聴いて観ることができる。便利になったはずなのに、ふと、その速さに自分の感覚だけが追いついていないように思うことがあります。そんな合理性が求められる世の中に反して、最近では時間の流れを感じるものに惹かれる感覚があるんです。
古書店で見つけた蔵書。何十年も使われてきた民具。旅先で出会った古い建物。現代の生活をする上で効率だけを考えれば新しいものの方が合理的なはずなのに、そういったものの前では自然と立ち止まってしまう。誰が作り、誰の手に渡り、どう使われていたのか。時間をかけて使われてきたものには、その時間そのものが染み込んでいるように見えてくる。それは傷や汚れといった表面的な変化だけではなく、長い時間を経ることで、そのものが本来持っていた輪郭が少しずつ現れてくるような感覚です。
Vindhek / Annemarieke Weber アムステルダムのフォンデル公園にある落とし物を付けるフェンス 色々な落とし物たちが持ち主を待っていた
今回このJournalを書くにあたり振り返ってみると、私はそんな感覚をCOSMIC WONDERの衣服を見た時にも抱いていたことに気づきました。近年のCOSMIC WONDERの衣服には、いつも時間の流れが存在しているように感じます。天然素材を用いること。手仕事を取り入れること。東洋の衣服やむかしの生活文化を参照すること。それらは懐古趣味として過去をなぞるためだけではなく、今を生きるための衣服として静かに更新されています。
2026AWのコレクションを見た時も、その印象は変わりませんでした。新しい提案でありながら、どこかずっと前から存在していたような感覚がある。未来の衣服というより、時間の層を何枚も重ねながら現れた衣服のように私の目には映ります。

Nostalgic painter's winter vest