空間を少し奥行きをつけたい時、又は高さを出して、立体感をつけたい時、例えばその辺りにある棒や袋やなんでも、床に置いたり、天井に吊ることで、空間の表情が変わり、空間の視点が一点だけではなくて、色んな目線が生まれる場合があるんです。
収納スペースを確保したい場合、段ボールを使って本棚にするなど、空間をより快適にする方法、空間を楽しくする方法は意外とどこにでも転がっています。

そうした、その場にあるものを即興的に使い、環境を変化させる行為は誰しも経験があると思います。家以外の空間、キャンプやピクニックで座る場所を確保したり、なんでもいいんですが。
知恵を使い、その場を乗り切る行為から一歩前に進み、市場に転がってるものを使ってプロダクトとして成立させる場合、そのアイデア以上に重要になってくるのが、そのもののプロポーション。それが一回きりではなく、何度も使用したくなる表情や空間との相性、そのものの耐久性、機能性も備えた上で、そうしたものを作るのはかなり難しい。

フランスのデザイナー Thelonious Goupilは、そうした日常にありふれたものを使い、普遍性を纏ったプロダクトを制作しています。

彼は、配送用のペーパーバッグをシェードにあしらうことで、シェードの張り替えからアレンジも可能なEnveloppe Lampeを制作しました。BLESSがデニムや既製品をアレンジして、新たな洋服へと転換したり、Enzo Mariが H鋼を使ったプロダクトを制作するように、彼もまた既製品の可能性を拡張するとともに、一過性にとどまらない普遍性を持ったプロダクトを制作しています。

その他の材もスクラップウッドや、ニッケルワイヤーといった身の回りにあるものを手探りで組み合わせていくように制作しています。

フランスにある彼のスタジオには、彼自身が面白い、心地いいと感じたフォルムを求めて、世界中から集めてきた沢山の蒐集物が並んでいました。本棚には柳宗理の作品集や河井寛次郎の作品集が陳列しており、日本の造詣にも深い彼が作るプロダクトは、どこか馴染みやすく日本人の思想を感じさせる側面もある。また友人と共に立ち上げたCollection Typologiesでは、一つのプロダクトをリサーチする出版物を発行しており、日常のあらゆるものを包括的に紹介しています。

パリのスタジオにて。彼が集めたものを紹介している様子。

プロダクトそのものだけではなく、パッケージに至るまで、美しいグラフィックと共に設計されている点も魅力の一つ。どこかプラモデルのような、組み立てる楽しさと好奇心を喚起する愛らしい見た目。さらに配送用のペーパーバッグの流れを汲み取るように、配送も考慮した合理的なデザイン。
デザインの視点がものを作るだけではなく、その周囲の状況や、空間やもの同時の関わり方、流通の在り方まで射程に入れたメタ的な視点が、彼のプロダクトデザインの魅力なのかもしれない。

Lampe Enveroppe

Typologie – The camping tent

木原