
スタッフの永田です。先月、人生で初めての海外渡航を経験しました。帰省のたびに訪れる関西国際空港でも、初めて足を踏み入れる国際線はどことなく張り詰めた緊張感のある空気で、これまでとはまるで違った場所のように映りました。他人種が入り乱れ、多言語が飛び交うインターナショナルでカオスな空港という非日常的な空間は、その治安をコントロールするためのハイセンシティブな目があらゆる方向から向けられます。

オランダ人アーティスト、Christian Mendertsumaは、その異常性について静かに言及します。9.11以後のオランダ、スキポール空港・保安検査場で、搭乗者から没収された数多の品物を記録したこの作品集は、僕の中で海外渡航の経験を経てより明確なメッセージ性を持つようになりました。





現在はプロダクトデザインの領域でも活躍する彼女が学生時代の卒業制作として編纂した本書は、製品のもつ背景に迫る独自の手法の原点が垣間見えます。
実を言うと、出発前に僕も保安検査でハサミを没収されました。刃物=凶器と断定的に扱う過剰なまでの防犯意識。所有者ごとに違う物の背景を無碍にして、あたかも凶行に用いられたかのように仰々しく撮影された記録写真。
これら没収品たちは、その後平米単位でオークションにかけられるそうで、それを知ったメンデルツマはこれらを落札しました。背景に千差万別の物語を持つモノたちを、彼女は無慈悲にカテゴリに振り分け、記録・撮影することで、それぞれの残酷なまでの個性を浮き彫りにしました。
また、作品集に一点ずつ包み込むことで、冤罪をかけられた品々をその思想を共感する新たな所有者の元へと届け、セカンドストーリーを編み出します。
僕らはものを眺めるとき、その機能性やデザインについて注視しがちですが、そのものの背景には確実に物語が存在します。そのストーリーに目を向け、尊重する彼女の姿勢は、合理性を追求する現代社会への警鐘でもあると感じます。僕は実際にこの本を手に取って、没収されたハサミを補完しましたが、見知らぬ同じ境遇の誰かのものであったそれを目の当たりにすると、何か念のようなものを感じてどうも以前のハサミのように使える気がしません。物に罪はないと考えさせられます。ご興味沸かれた方は、是非直接ご覧いただければと思います。