最近、何かを「待つ」ということが少なくなったように感じています。知りたいことはすぐに検索できて、音楽も映画もすぐに聴いて観ることができる。便利になったはずなのに、ふと、その速さに自分の感覚だけが追いついていないように思うことがあります。そんな合理性が求められる世の中に反して、最近では時間の流れを感じるものに惹かれる感覚があるんです。


古書店で見つけた蔵書。何十年も使われてきた民具。旅先で出会った古い建物。現代の生活をする上で効率だけを考えれば新しいものの方が合理的なはずなのに、そういったものの前では自然と立ち止まってしまう。誰が作り、誰の手に渡り、どう使われていたのか。時間をかけて使われてきたものには、その時間そのものが染み込んでいるように見えてくる。それは傷や汚れといった表面的な変化だけではなく、長い時間を経ることで、そのものが本来持っていた輪郭が少しずつ現れてくるような感覚です。

Vindhek / Annemarieke Weber  アムステルダムのフォンデル公園にある落とし物を付けるフェンス 色々な落とし物たちが持ち主を待っていた

今回このJournalを書くにあたり振り返ってみると、私はそんな感覚をCOSMIC WONDERの衣服を見た時にも抱いていたことに気づきました。近年のCOSMIC WONDERの衣服には、いつも時間の流れが存在しているように感じます。天然素材を用いること。手仕事を取り入れること。東洋の衣服やむかしの生活文化を参照すること。それらは懐古趣味として過去をなぞるためだけではなく、今を生きるための衣服として静かに更新されています。
2026AWのコレクションを見た時も、その印象は変わりませんでした。新しい提案でありながら、どこかずっと前から存在していたような感覚がある。未来の衣服というより、時間の層を何枚も重ねながら現れた衣服のように私の目には映ります。

 

Tsunobukuro tote of the Flower of life

刺し子の生地が使用されているこちらのバッグは日本で古くから使われていた角袋の形を元にしたもので、その姿は現代のバッグというより、どこか道具のようにも見えます。刺し子は本来布を補強し長く使うための知恵として生まれたものです。装飾ではなく、暮らしの中で布を繕いながら使い続けるための手仕事でした。誰かが作り、使い、受け継いできた形と手仕事。それらが今の時代の道具として静かに差し出されていることに、強く惹かれます。


Nostalgic painter's winter vest

このベストはシェットランドウールとケンピを混紡した毛糸を用い、18世紀の英国式紡績機でゆっくりと紡績された糸から作られたものです。古い織物を思わせる豊かな表情を持ちながらも、それは単なる再現ではない。新品であるはずなのに、なぜか昔から存在していたもののように見える。

私は洋服を選ぶ時、その服を着ている少し先の自分を想像することがあります。ただ、それは丈夫であるとか、流行に左右されないという意味だけではありません。数年後に見返した時、自分自身の時間も一緒に思い出せるかどうか。着始めた瞬間が完成ではなく、暮らしの中で少しずつ身体に馴染み、景色に溶け込み、その人と共に変化していくもの。
速く消費されるためではなく、時間を共にするためのもの。
COSMIC WONDERの衣服に惹かれる理由も、きっとそこにあるのだと思います。そして私が惹かれているのは時間そのものではなく、その時間を受け取りながら残ってきたものなのかもしれません。
今回 紹介したバッグやベストのほかにも、店頭にはたくさんのアイテムが並んでいます。ぜひ実際に袖を通し、感じながら、ゆっくりとした時間の中で楽しんでいただけたら嬉しいです。

最後になりましたが、今回初めてJournalに登場しました、守本です。何度かお店でお会いしたことのある方もいらっしゃるかと思いますが、まだ初めましての方も多いと思います。            

これから店頭でお会いできる日を楽しみに、 待っています。

COSMIC WONDER


守本